建築家によって提供されたテキストによる説明。北九州市門司にある定員240名の老朽化した幼稚園の改修工事です。敷地は北は広大な海、南は雄大な山々に囲まれた住宅地に位置しており、自然に恵まれています。特に、幼稚園の園庭は近くにある「みどり渓谷」の影響で、高低差が3メートル以上あるのが特徴です。既存の敷地は、自然遊具や豊かな木々が魅力的な遊び場として、共生と学びの場として子どもたちに親しまれてきました。この環境を大切にしながら、外部の自然を内部に取り込むことで、内部と外部の境界を曖昧にするデザインとなっています。
全教室がグラウンドに面した1階にL字型に配置されており、子どもたちは自然とのふれあいを大切に過ごします。校庭と教室を結ぶ外廊下は日本家屋の縁側をイメージしており、一日の動線が半屋外となり、自然や天候の変化を常に体感することができます。屋根から降る雨を感じ、風がもたらす季節の移り変わりを感じます。こうした日々の体験を通して、子どもたちの感性は磨かれ、自ら考えて行動する力を育みます。
創立以来幼稚園を見守り続けてきた既存樹木を守ることを目的として、園舎内には中庭が設けられている。中庭の隣にはダイニングエリアがあり、フル開閉可能な窓があり、季節や既存の木の変化を感じながら食事を楽しむことができます。既存の木々の保存を大切にすることで、子どもたちは環境への理解と尊重の心を養い、持続可能な未来に向けて自然を大切にする意識を育みます。
近年、幼児施設では過剰な安全性や快適性を優先する傾向があります。しかし、この幼稚園は子どもたちの自主性を重視し、自由に動ける環境を整え、常に自然とのつながりを育んでいます。この取り組みにより、この建物は子どもたちの感性を育み、主体的な幼児教育を促進する役割を果たしています。